特許の先使用による通常実施権

特許権者の意思に基づかないで、法律によって自動的に認められる実施権を法定実施権といいますが、この法定実施権の代表的なものが「先使用による通常実施権」です。

  • 先使用による通常実施権は、先願主義(同一の発明については、先に出願した者に特許権を与えるという制度)を補うものです。
  • ある発明Aについて甲が特許出願して特許権を取得した場合において、甲の特許出願前に、乙が発明Aについて実施又は実施の準備をしていた場合に、乙に対して発明Aについての実施を認める実施権です。
  • 許諾実施権は有償の場合が一般的ですが、先使用による通常実施権は無償です。
  • 乙が実施できる範囲は、乙が実施又は実施の準備をしている発明および事業の目的の範囲内に限定されます(特許権者が実施できる範囲とは必ずしも同じではないということに注意)。

特許権者の義務等

  • 特許権維持のために特許料を支払う必要がある
    1. 特許権の設定登録後、3年を経過した後は、毎年、特許権維持のための特許料(年金)を支払う必要があります。
    2. 期限内に特許料を支払わなかったときは、特許権は消滅します。  
  • 正当に実施する必要がある
    1. 基本的に、特許権によって競業者の市場参入が阻止された結果として、市場が独占されたとしても、独占禁止法の適用範囲外です。
    2. ただし、例えば、ある競業者と共謀して、ある製品に関する全ての特許権を例えば管理会社にプールして(パテントプール)、その他の競業者はパテントプールされた特許権を一切使えないように排除するシステムを構築して、競業者の市場参入を阻止するようなやり方は、独占禁止法違反とされる可能性があります。
  • 正当に権利行使する必要がある
    1. 特許無効にされるような特許権については、差止請求や損害賠償請求等の権利行使が制限されます。
    2. 特許無効にされる可能性が高いにもかかわらず、権利行使して相手方に損害を与えてしまったときは、相手方から損害賠償請求される可能性があります。
    3. 特許権が十分に有効であることの確認をしてから、権利行使することが望まれます。
  • 特許発明を実施していない場合、他人に実施権設定されてしまう可能性がある
    1. 特許発明を継続して3年以上実施していない場合に、他人が特許発明の実施を希望したときは、特許庁長官の裁定によって、実施希望の他人に対して強制的に実施権(通常実施権)が設定されてしまう場合があります。
  • 公共の利益のために、強制的に実施権設定されてしまう可能性がある
    1. 例えば、ある病気が流行したときに、特許権者による治療薬の製造が不十分な場合に、別の製薬会社に実施権が強制的に与えられる場合があります。

特許権の存続期間

  • 特許権の存続期間は、原則として、特許出願の日から20年です。
  • ただし、医薬や農薬に関する発明品のように、安全確保等のために実施についての許可を得るために実施が制限されたときは、5年を限度に、実施を制限された期間分だけ存続期間を延長できます(存続期間の延長登録出願を行う必要があります)。
  • 機械製品や電気製品に関する発明の場合には、上記存続期間の延長は適用されないと考えてよいでしょう。
  • 存続期間満了後は、特許権が消滅して(特許発明が一般に開放されて)、他の特許権を侵害しないことを前提に、誰でも自由に実施できることになります。

特許無効審判・訂正審判(訂正請求)

  • 特許無効審判(従前の「特許異議申立」は特許無効審判に吸収されました)
    1. 特許無効審判が請求されることによって、特許が無効にされる場合があります。
    2. 特許無効になると、特許権ははじめから存在しなかったものとみなされます。
    3. 特許無効理由の多くは、特許発明が新規性なしや進歩性なしというものです。
    4. 特許無効審判は、侵害問題と絡めて請求されることが多く、侵害者側の採択するもっとも一般的な特許権攻撃の手法です。
  • 訂正審判・訂正請求
    1. 訂正審判と訂正請求は実質的に同じようなものですが、特許無効審判が請求されているときに行う訂正を訂正請求と称してます。
    2. 特許無効になると、侵害云々する余地がなくなり、特許権者にとっては大きな痛手となります。
    3. 特許権を有効に維持するために、例えば特許請求の範囲を限定して、特許性を確保しようとします。すなわち、現状のままの特許請求の範囲の内容では例えば進歩性がないと判断されるようなときでも、特許請求の範囲を限定すること(権利要求範囲を狭めること)により、進歩性を有するものに変更されて、特許権を有効に維持することが可能な場合が多々あります。
    4. 訂正審判・訂正請求は、特許無効審判に対する効果的な防御手法となります。
    5. 特許請求の範囲を限定し過ぎると、特許権は有効に維持できても、もはや侵害にはならない(権利範囲には入らない)という事態にもなりかねず、訂正内容をどのようにするかは非常に重要となります。
    6.  

    ※特許無効審判、訂正審判・訂正請求は、侵害問題が絡む非常に重要な手続きとなりますので、弁理士に依頼するのがよいでしょう。

Posted at 2007-5-16

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