特許侵害からの救済処置

他人によって特許権を侵害されたときは、次のような救済措置を受けることができます。

差止請求

  • 他人による特許発明の実施を差し止めることです(現在および将来の侵害行為の阻止)。
  • 裁判所への訴訟提起が必要です。

損害賠償請求

  • 侵害によって被った損害賠償を求めることです(過去の侵害行為に対する救済)
  • 裁判所への訴訟提起が必要です。

信用回復の措置

  • 侵害によって信用を害されたことへの救済措置です(名誉挽回)。
    例えば、侵害者による新聞や業界紙への謝罪文の掲載等
  • 裁判所への訴訟提起が必要です(損害賠償請求にからめて行います)。

輸入差止

  • 特許権の侵害品は、税関での輸入差止の対象となります。侵害品の輸入が考えられる場合は、税関に輸入差止申立書を提出して、輸入差止を行ってもらうのも効果的です。
  • 輸入差止は、特許権侵害品のみならず、実用新案権、意匠権さらには商標権の侵害品についても可能です。

刑事罰

  • 特許権を侵害した罪は、5年以下の懲役又は5百万円以下の罰金です。
  • 特許権侵害は非親告罪ですが、特許権者からの訴えなしに警察自ら侵害者を逮捕することは殆どありません(刑事罰を要求するときは、警察に訴える必要があると考えるべき)。

虚偽表示の罪

  • 侵害からの救済とは別になりますが、特許権を取得していないのに、特許表示やこれと紛らわしい表示をすることは、虚偽表示であるとして禁止されています。
  • 虚偽表示したときの罪は、3年以下の懲役又は3百万円以下の罰金です。

特許権は財産権であるから、使用・収益などは自由

  • 特許権を他人に譲渡できます。
  • 他人に実施権を許諾することができます(実施権については後の記載参照)。
    実施許諾の範囲は、全部又は一部の請求項、地域限定、期間限定、数量限定等、契約によって自由に設定できる。
  • 質権や信託の対象となります。
  • 特許権を放棄することができます。
    許諾実施権者等の利害関係人がいる場合は、その許諾が必要です。
  • 特許権は相続の対象になります(相続人がいない場合は、特許権は消滅します)。

特許権が共有の場合

  • 各共有者は、原則として、それぞれ自由に特許発明を実施することができます。
    1. ただし、共有者間での契約によって実施を制限することができます。
    2. 共有関係が「法人+個人」である場合、法人は別途の契約で制限を受けない限り自由に実施できる一方、個人は実施する能力がないため特許権者となった意味が殆どないというのが通常です。
    3. 「個人」が「法人」と共有する場合に注意しておく重要な観点です。
  • 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分について譲渡したり質権を設定することはできません。
  • 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、実施権を許諾することはできません。

承諾による特許権の実施権

特許権者の意思(許諾)によって発生する実施権(許諾実施権)は、大別して、専用実施権と通常実施権があります。

専用実施権

  • 専用実施権は物権的(排他的な)な権利です。同一範囲については重複して専用実施権を設定することはできません。
  • 特許原簿に登録(専用実施権の設定登録)することが必要です。 設定した専用実施権の範囲では、特許権者であっても使用できません。
    1. 例えば、ある地域Xでの販売について専用実施権を設定した場合は、特許権者はその地域Xでの販売をできません。
    2. ただし、専用実施権者からある地域Xでの販売について通常実施権を許諾してもらうことにより、特許権者はその地域Xにおいて販売することが可能となります。
  • 専用実施権者の立場
    1. 専用実施権者は、設定範囲では基本的に特許権者と同等の立場に立ちます。
    2. 差止請求、損害賠償請求等の侵害行為からの救済措置を、専用実施権者だけで行うことができます。
    3. 専用実施権の譲渡や、再実施権の設定等は、特許権者の利害に大きく影響するので、特許権者の承諾が必要です。

通常実施権

  • 通常実施権は債権的(非排他的な)な権利です。 同一範囲について重複して通常実施権を設定するができます。
    1. 例えば、ある地域Xでの販売について、甲に実施許諾すると共に、乙や丙にも同様な内容で実施許諾することができます。
  • 特許原簿に登録することは特に要求されません。
    1. ただし、特許原簿に登録しておくと、特許権が譲渡された後も、特許権を譲り受けた新たらしい特許権者に対しても、通常実施権の存在を主張できます。
  • 設定した通常実施権の範囲でも、特許権者は依然として実施できます。
    1. 例えば、ある地域Xでの販売について通常実施権を設定した場合に、特許権者はその地域Xでの販売が可能です。
    2. ただし、特許権者がある地域Xで販売できないというような契約条項があれば、特許権者であってもその地域Xでの販売はできません。
  • ある者のみが独占的に実施できるという内容の契約が行われている通常実施権が、独占通常実施権と呼ばれます。
  • 通常実施権者の立場
    1. 差止請求、損害賠償請求等の侵害行為からの救済措置を、通常実施権者だけで行うことはできません。特許権者(あるいは専用実施権者)に行ってもらうことになります。
    2. 通常実施権の譲渡等は、特許権者の利害に大きく影響するので、特許権者の承諾が必要です。

Posted at 2007-5-16

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